2025年1月15日に正式リリースされたDrupal-CMSですが、リリース前のプレリリース版が12月に公開されていたのでMacのローカル環境にインストールを行い、簡単にですが触れていました。
実際に自身のサイトで使用可否を判断できればと考え、テーマをいくつかインストールして触っています。コンセプトとしては、これまでのDrupalが開発者が使用するCMSというイメージから、一般のユーザーが使用できるようインターフェースをわかりやすくした事。モジュールやテーマの管理をGUI上で完結出来るなどターミナルからの操作を極力なくした事。
そのことでIT技術の知識をそれほど持たないユーザーでもWebサイトの構築が出来るよう工夫されているWordPressの普及を意識して開発されたと考えられる機能がいくつもあります。
従来のDrupalコアのインストールとの違いもあり、Drupal-CMSはインストール時に、利用目的であるブログやニュースサイトの構築など必要なモジュールがパッケージ化され配布されています。私はDrupalを個人のブログとしての利用しているので、インストールはブログのパッケージを選択してインストールしています。
当サイトが、Lightsailとbitnamiが用意するDrupal10.xで構築されており機能的な制限から、AWSのEC2への移行とDrupal11.xへの更新を視野に入れているので、直ぐにDrupal-CMSへの移行を考えているわけではないのですが、今後Drupalのメインディストリビューションとなる可能性を秘めている優れたコンセプトで構成されているので私自身の興味も深くMacのローカル環境にインストールを行い触れています。
プレリリース版をインストール後軽く触っていたのですが、その後、更新が止まっていた別のWordPressのサイトの更新を考えておりその作業に追われていたため、しばらくDrupal-CMSに触れていませんでした。プレリリース版のままでしたので、正式リリースから日が経ちましたが、また触れてみようと考えインストールしていたプレリリース版のアップデートを行いました。

Drupal-CMSの管理画面
impression
Adminコンソールの構成や機能が従来のDrupalの構成からWordPressを意識したのではと考えられるような変更が随所に見られます。私自身が未だ軽く触れた程度でありますが、利用して感じたDrupal-CMSが従来のDrupalコアから進化したと思える機能を紹介します。
1.menu
Adminコンソールにログインすると、管理メニューのデザインが洗練されている印象を受けます。Drupalコアでは管理メニューがトップに横並びで配置されていましたが、管理メニューが左サイドメニューに配置されています。この構成はWordPressと同様です。
従来のDrupalは各機能のメニューに必要と考えられる機能が網羅されており、あまり階層を持たせずに様々な機能にアクセス出来るようなインターフェースでした。
Drupal-CMSのメニューは、一般的に必要と思われる機能のみを選定し、メニュー階層上部にまとめ、専門的な機能や一般的にはアクセスが不要な機能は下位階層にまとめて配置しています。この事で、Drupalの専門的知識がない方が初めて触れてもサイト構築に必要な機能がわかりやすいメニュー構成になっています。
私が感じている、DrupalとWordPressの大きな違いに、DrupalはDrupalコアの基本機能の設定を行った上でサイトを構築していく必要があり、テーマやモジュールで設定出来る範囲もDrupalコアの延長線上にあり、デフォルトで用意されたものを軽く触れるだけでは、独自のデザインやサイト構成を作るのが難しいところがあります。
WordPressはテーマやプラグインにWordPressのコアプログラムが持つ機能を持たせているため、WordPressのコアプログラムで行う機能設定を意識せずに、テーマやプラグインに用意されたわかりやすいインターフェースを利用し、デフォルトで用意されたものを軽く触れるだけでも、独自のデザインやサイト構成を作る事が比較的容易に出来ます。
WordPressが優れているのは、GUI上に用意されたインターフェースが視覚的に把握しやすく、デザインや機能がWordPressの構造を理解しなくてもサイトデザインやサイト構成を組みやすいことがあります。
今回のDrupal-CMSのコンセプトが、従来のDrupalコアの利用者である開発者やそれに近いユーザーだけでなく、Webサイトを初めて構築するようなユーザーでも理解しやすいインターフェースを意識し開発されています。
現時点では、Drupal-CMSのインターフェースが従来よりわかりやすくなっていますが、モジュールやテーマが用意するテンプレートやデフォルト機能が従来のDrupalの発想で組まれているので、WordPressのようなインターフェースになるのは未だ先ではありますが、今後近い形に進化していくのではないかと考えています。
2.機能拡張
機能拡張のモジュール管理の大きな変更点として、Drupal-CMSではDrupalコアの更新がComposerを使わなくてもAdminコンソールから更新が可能となっています。GUIでの操作を間違えないようにダウンロード→メンテナンスモードの選択→インストール→データベースの更新と全てAdminコンソールから行えるようになっています。
モジュール単体やテーマは元々Adminコンソールから更新可能でしたが、コアプログラムの更新までGUI上から可能になっています。
3.ブラウザープロジェクト
ブラウザープロジェクトというメニューが追加され、テーマやモジュールをAdminコンソールから選択しインストール出来ます。これもWordPressのプラグインの追加やテーマの追加をAdminコンソール上から行える機能に近いものになっています。
従来は、Drupal公式サイトに掲載されていたモジュールやテーマへのリンクが掲載され、各モジュールのインストール方法に準じた操作を行う必要があり、基本はComposerでインストールする必要があったのですが、AdminコンソールからGUIの操作で完結するので、ターミナルでコマンド操作をしなくてもモジュールの追加が可能となった事は大きいのではないかと考えています。
4.コンテンツ
基本的な機能はほぼ従来のDrupalの操作方法となっていますが、コンテンツの投稿や基本ページの作成を行う際に、MetaDescriptionが標準で用意されていることと、予約投稿の機能が追加されています。従来はメタタグのモジュールを使用する必要があった事と予約投稿は機能としてなかった事からモジュールを別途インストールする必要があったのですが最初からモジュールをパッケージングしてこの機能が標準で搭載されていることも大きな進化です。
WordPressは予約投稿は、記事の公開日を指定することで可能であり、MetaDescriptionはテーマに用意されているか、Yoastなどのプラグインで追加する必要があります。
5.モジュールのパッケージ化
インストール時点でブログ用途に必要なモジュールをパッケージ化してインストールしているので、これまで自身でインストールしていたモジュールが最初からインストールされ、依存関係がクリアされています。パンくずリストで使用するEasyBreadCrumbやスケジューラー、WebFormやCaptchが最初からインストールされ依存関係がクリアされている事も大きな進化です。
未だ触れてから日も浅く、触れていない機能も多く、他にも様々な機能が追加されていますが、まだ使いきれていないのでおいおい利用していきたいと考えています。
Drupal-CMSの所感
- 洗練されたメニュー構成
- 機能のメニュー構成が理解しやすくなった
- インストールや更新が全てGUI上から可能になった
- ターミナルやコマンドの知識がなくても利用可能
- 目的に応じてパッケージ化されたディストリビューション
- 初期構成である程度のコンテンツを作成出来るパッケージ
上記の進化により洗練されたGUIのインターフェースを触る事でDrupalコアの機能を理解しなくてもWebサイトが構築出来るように進化しています。但し、コアプログラムの開発思想での実現の段階であるので、現状では、従来通りDrupalコアの機能を理解しないと目的とするWebサイトを構築するのは難しいです。
WordPressのような、GUIで視覚的に用意される機能を触っているうちに、使い方を理解しながらWebサイトが構築出来るインターフェースとなるには、モジュールやテーマが今回のDrupal-CMSの開発思想を持ち、テンプレート化され実利用可能なものを複数用意しユーザーに提供出来る形になっていかないと難しいのではないかと感じています。
WordPressは現在6.7系ですが、6.6からサードパーティーが進めてきたインターフェースを、コアプログラムに統合する動きを見せています。一例だと、ナビゲーションメニューを自由に設定するにはテーマの提供者やプラグインの提供者が用意するウィジェットなどに頼っていた部分をWordPressのビルダーに標準で持たせています。
ページ生成などDBの処理において、Drupalはプロセスのキャッシングをコアプログラムが持つ事でWordPressより処理スピードのアドバンテージがありますが、WordPressもKusanagiサーバーなどインフラでの処理スピードの技術が進歩して来ており、従来の規模や用途による目的のみがCMSの選択基準にはならなくなって来ています。
Drupal-CMSはWordPressの利点をDrupalの利点に取り入れているパッケージとなっています。WordPressの大きな利点であるサードパーティーのマーケットの充実が、プラグインやテーマのインターフェースの洗練を推し進めていますが、Drupalはこの部分がこれからなのでサードパーティーのマーケットが充実し、WordPressのようにインターフェースや実利用出来るテンプレートが洗練される事でDrupal-CMSが目指すユーザーの間口を広げていくことにつながると考えています。
余談ですが、私自身WordPressの進化、Drupalの進化、各サードパーティーが受け持ち分かれていった機能などがここに来て再収束しているような感覚を受けており、元はPHPとDBを使いWebサイトを構築するプログラムとしてスタートしたCMSがいくつかに別れ進化したのですが、いくつかの理想的な回答が見えて来た事でそれぞれ独自に進化したアドバンテージをCMS間でお互いにクロスオーバーしている印象を受けています。
Problem
簡単に触れている状況ですが、いくつか問題点もあります。
プレリリース版のインストールから約2月放置していたので、正式版のインストールとモジュールも更新を行ったのですが、更新がAdminコンソールのGUI上から行える便利さから、試しに全てAdminコンソールのGUI上から更新を行った際、Automatic Updates モジュールでエラーが発生し、対応に結構時間がかかりました。詳細は長くなるので別記事にまとめられればと考えています。
Composerでモジュールのアンインストールと再インストールを行う事でエラーの解決はできますので、モジュールによってはGUI上からのインストールだと上手くいかないバグがあるのかもしれません。(DDEVの影響も考えられます。)
インターフェースが変わったので、これまで慣れたDrupalの機能の置き場所がどこにあるのかがわかりにくくなってしまっています。従来のインターフェースでは機能面で全ての設定が可能であったのですが、初めて触れる方でも混乱しないように一部設定項目が無くなっている(下位階層に移動されたりマスクされている)ので、利用当初は戸惑うかもしれません。
始まったばかりのプロジェクトなので、モジュールにベータ版などが含まれており、実利用での問題はないのですが環境によっては安定性に影響が出るかもしれません。
Drupalコアのアップデートではなく別物とも考えられるCMSとしてリリースされたDrupal-CMSに触れてみて所感を記事にしてみました。私のようなIT技術の知識をあまり持たない人間の所感なのであまり参考にならない記事ですが、従来のDrupalのインターフェースがどこか開発者向けであるイメージから、開発者ではないユーザーに間口を広げたディストリビューションではないかと感じ、技術者ではない一般ユーザーの利用も多いWordPressの普及や成功を意識して開発されているのではと感じています。
今回のDrupal-CMSのリリースを行った事で、Drupal公式サイトは一般ユーザー向けのディストリビューションをDrupal-CMSとし、開発者向けのディストリビューションをDrupalコアと位置付けています。
Drupalは非常に優れたプログラムで、デフォルト状態でも相応のスケーラビリティに対応出来る事や、情報整理に長けており、業としてWebサイトを運営する必要のある企業などの需要に応えて来ています。
Drupalの基本設定をベースとしてWebサイトを構築するプロセスが一般ユーザーにとって敷居が高く、どうしてもベンダーなどの開発者に依頼しないと目的とするWebサイトの構築が難しい事があります。
このことからサードパーティーも開発者向けのもが多く、一般ユーザーが手軽に好みのデザインや機能を持つWebサイトを構築するのが難しかったのですが、今回のDrupal-CMSのコンセプトが、一般ユーザーが手軽に利用出来るテーマやモジュールの開発や普及に繋がり、相応の需要が出来上がるとマーケットが成り立ち、収益も望めるのであれば、有償の優れたテーマやモジュールが増え、利用しやすさからユーザーの間口が広がり利用者が増え、マーケットも出来上がり、収益構造が成り立ち、Drupalプロジェクトを取り巻く資金面での安定が好循環を作り出すきっかけとなるのではないかと期待しています。